折井税理士事務所
Orii Tax Accountant Office


災害救助法の適用を受ける地域の被災者のための義援金等

(1)災害救助法の適用と義援金配分委員会等

  災害救助法は、災害に際して国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、
応急的に必要な救助を行い、被災者の保護と社会の秩序の保全に図ることを目的とする法律である。

  現在、国内において一定の規模の災害が発生した場合には、同法に基づき日本赤十字社、共同募金会、
社会福祉協議会及び新聞・放送等の報道機関等(以下「募金団体」という。)が募集する義援金等は、
最終的に義援金配分委員会等に拠出されることが多いようである。

  この義援金配分委員会等は都道府県防災会議(都道府県知事が会長)が作成する都道府県地域防災計画に
基づいて都道府県に設置されるものであることから、最終的に義援金配分委員会等に拠出されることが
明らかな義援金等は地方公共団体に対する寄附金に該当することになる。

  なお、義援金配分委員会等に拠出された義援金等は同委員会の決定に基づいて被災者に配分されている。

(2)海外で発生した災害等に対する義援金等の募集について

  近年、海外において災害等が発生した場合にも、国内で災害が発生した場合と同様に、
募金団体が義援金等を募集する事例が見受けられる。

  このような海外で発生した災害等の被災者救援のために支出される義援金等は、
原則的には一般の寄附金に該当し、損金算入限度額を超える金額は損金の額に算入されない。

  ただし、募金団体が寄附者から受け入れた義援金等の全額を日本赤十字社などの特定公益増進法人に対し
て寄附することが募金趣意書等において明らかにされている場合、つまり募金団体はいわゆる通過勘定
となっているにすぎないと認められる場合には、当該義援金等は特定公益増進法人に対する寄附金に
該当することになる。



災害の場合の取引先に対する売掛債権の免除等

  税法上は、法人がその得意先等に対して売掛金等の債権を免除した場合に、その免除をしたことに
合理的な理由がなければ、原則として相手方に対して寄附金を支出したものとして取り扱うこととなる。

  しかしながら、納品した商品等が災害により被災した、あるいは取引先が被災したといった事情がある場合に、
その取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間内において、復旧支援を目的として
売掛金等の債権を免除するときは、取引条件の修正等といった実質にあると考えられる。

  そこで、災害時における売掛金等の免除は、それが取引先の災害復旧の支援を目的とするものである限り、
寄附金に該当しないことになる。

  また、既に契約で定められているリース料、貸付利息、割賦代金等で災害発生後に授受するものや
災害発生後に新たに行う取引につき従前の取引条件を変更するものについても同様に取り扱うこととされている。

得意先等の取引先の意義

  得意先、仕入先、下請工場、特約店、代理店等のほか、商社等を通じた取引であっても自ら価格交渉等を
行っている場合の商品納入先など、実質的な取引関係にあると認められる者が含まれる。

  したがって、何らかの取引関係があれば、親子会社間における売掛債権の全部又は一部の免除であっても、
その被災した法人が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間内において復旧支援を目的として
行われるものであれば、寄附金に該当しないことになる。

  また、業界団体のほか融資を受けている銀行等も、ここにいう取引先に含まれることになる。

売掛債権の免除等をした場合

  その免除等をしたことによる損失が寄附金以外の費用として取り扱われるのは、その免除等が取引先の
復旧過程において復旧支援を目的として行われるものに限られる。

  この場合の復旧支援は、それを行うかどうかは個々の企業の判断によらざるを得ないのであるから、
必ずしも被災した法人の取引先のすべてが復旧支援を行うことが前提条件とされているわけではない。

  このため、被災した法人に対する復旧支援のための売掛債権の免除等が一部の法人のみによって
なされていても差し支えないことになる。

取引先の復旧過程において復旧支援を目的として行われるもの

  被災発生後の相当期間内、すなわち取引先が災害により被害を受けた後、通常の営業活動を再開するための
復旧過程にある期間内に売掛債権の免除等を行うものに係る損失がその対象とされている。

  この場合の復旧過程にある期間には、例えば、店舗等の損壊によりやむなく仮店舗により営業を行っている
ような場合の復旧過程にある期間も含まれると解されるが、店舗等の営業拠点は復旧したが被災に伴う
取引の中断等を契機として事業規模が縮小し、債務超過の状態が継続しているような場合における売掛債権
の免除等は、復旧過程にある期間内の免除等には含まれないものと解される。

免除等の方式

  売掛債権の免除等は、どのような方式によるものであっても差し支えないが、口頭による申出については、
免除等を行ったことが確認できないという実務上の問題があることから、書面をもって行うことが前提とされている。

  なお、その書面は、公正証書以外のものでも差し支えない。


災害の場合の取引先に対する低利又は無利息による融資

  法人が、災害を受けた取引先に対して低利又は無利息による融資をした場合において、
その融資がその取引先の復旧過程での復旧支援を目的として行われるものであるときは、
取引先の救済を通じて自らが蒙る損失を回避するためのものであるとみることができ、
それなりに経済合理性を持つとみるべきである。

  そこで、このような場合の通常収受すべき利息と実際に収受している利息との差額については、
税務上も寄附金としての認定は行わない。

低利融資等が寄附金とされない理由

  その融資が災害を受けた取引先の普及過程において復旧支援を目的として行われるものであり、
その支援を通じて自らが蒙る損失を回避するためのものであるとみることができるためである。

  したがって、その融資は、それが被災した取引先の救済を図るためのもので、かつ、
その取引先の被災の程度、取引の状況等を勘案したものであれば、融資期間の長短や融資額の多寡を
問わず、寄附金としては取り扱わないこととなる。

  もっとも、その融資はあくまでもその取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間内に
行われるもので、かつ、その取引先の復旧支援を目的とするものでなければならないことから、融資期間及び
融資額については、その面から合理性を有することが必要であり、自ずから限界があるものと考えられる。

貸付金の利子を減免したとき

  既に契約で定められている貸付金の利子を減免したときは、売掛債権の減免と同様、
その免除による損失は寄附金以外の費用として取り扱うこととされている。

事業関連性の希薄な子会社等に対する無利息又は低利による融資

  取引関係のない子会社など、事業関連性の希薄な子会社等に対して無利息又は低利により
融資をしたことによる経済的利益の供与は、たとえその子会社等が被災したことを契機として行われる
ものであっても、子会社等の救済を通じてその法人の事業上の損失を回避するという
ようなものとはいえないことから、一般的には、寄附金として取り扱うことになる。


自社製品等の被災者に対する提供

  法人が行う被災者に対する自社製品等の提供は、災害という緊急性に鑑みてその拠出が行われるものであり、
また、人道的見地や社会的要請に基づき行われる場合が多いものと考えられる。

  このような場合の物資等の提供は、国や地方公共団体が行う被災者に対する物資等の供給と同様な
側面を有しているものとみることもできるし、また、一方では、その経済的効果からいえば、
広告宣伝費に準ずる側面を有していると見ることもできる。

  このため、その提供が、国や地方公共団体を経由したものでないこと、あるいは災害救助法第32条の
規定により救助又はその応援の委託を受けた日本赤十字社を経由したものでないことをもって、
全く任意な一般の寄附金と同様に取り扱い、一定の損金算入限度額を超える部分の損金算入を認めない
ということも、実態にそぐわないものと考えられる。

  したがって、特定のごく限られた者のみに対する贈答(利益供与)を目的としたものは除き、その提供先が
不特定又は多数の被災者である救援物資等の提供は、広告宣伝費等として費用処理することになる。

自社製品等を不特定又は多数の被災者に提供する場合

  その提供のために要する費用が寄附金以外の費用として取り扱われることとされたのは、その提供が、
経済的効果からいえば、広告宣伝費に準ずる側面も有しているとみることができることによるものである。

  したがって、自社製品等とは、原則として法人が製造等を行った製品でその製品に法人名等が表示されている
ものをいうものと解されているが、法人名が表示されていない物品や他から購入した物品であっても、
その提供に当たって、企業のイメージアップなど実質的に宣伝的効果を生じさせるようなものであれば、
これに含めて差し支えないと考えられる。

  また、自社製品等の提供は、物品の提供に限定されているわけではなく、
その法人の業務がサービスの提供(例えば、電話通信業務など)である場合の役務の提供、
法人の社宅や研修所等を緊急避難的に被災者に提供した場合も、ここでいう自社製品等の提供に含まれる。

自社製品等の提供先が得意先の従業員の場合

  その製品等の提供が多数の被災者に対して救援のために緊急に行われたものであり、
特定のごく限られた者のみに対する贈答(利益供与)を目的としたものでなければ、
広告宣伝費として費用処理できると考える。



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