折井税理士事務所
Orii Tax Accountant Office


法人が取引先に対し災害見舞金等を支出した場合の税務上の処理

  法人が、得意先等の社外の者の慶弔、禍福に際し一般的に支出する費用は、税法で規定する
慰安、贈答その他これらに類する行為のために要する費用に該当することから、従来から
交際費等として取り扱われている。
  しかしながら、法人が、その得意先等の取引先が被災したことにより、従前の取引関係の
維持・回復を目的として、取引先の復旧過程において支出する災害見舞金等は、慰安・贈答
のために要する費用というよりは、むしろ取引先の救済を通じて自らが蒙むる損失を回避す
るための費用であるとみることができる。
  したがって、このような災害見舞金等については、その実質に着目して交際費等に
該当しないものとされている。
  なお、この場合次のことに留意する必要がある。


(1)取引先に対して災害見舞金を支出した場合

  その見舞金をその取引先が福利厚生の一環として役員又は使用人に給付するとしても、
その災害見舞金は、取引先の福利厚生に対する支援という復旧支援を目的として支出する
ものの一つであり、取引先の救済を通じてその法人の事業上の損失を回避するための
支出であるとみることができる。
  このため、その支出した災害見舞金は、交際費等に該当しない。

(2)得意先等の取引先に対して事業用資産(自社の製品等を含む。)を提供した場合

  災害見舞金と同様に取り扱われ、交際費等に該当しない。
また、直接の取引先ではないが、自社の製品等を取り扱う小売業者等に対して、災害により
損壊した商品を無償で交換した場合や滅失した商品を無償で補てんをした場合の費用についても、
その費用は広告宣伝費又は販売促進費としての側面を有しているものと考えられるため、
交際費等以外の費用として取り扱われることになる。

(3)適用対象となる事業用資産

  その物品が取引先の事業の用に供されるもののほか、その取引先の福利厚生の一環として
被災した役員又は使用人に供されるものも含まれることとされており、取引先に対する
災害見舞金の拠出と同様に、これに要した費用は、交際費等に該当しない。

(4)災害見舞金等を受け取った取引先における処理

  災害見舞金等は益金の額に算入することになる。
しかしながら、受領後直ちに福利厚生の一環として使用人等に供与する物品並びに取得価額が
10万円未満の少額な減価償却資産及びその使用可能期間が1年未満である減価償却資産については、
益金の額に算入することを要しないこととされている。
  これは、このような場合には、益金の額と損金の額が同時に計上され、その計上をしないとしても
課税上特に問題はないということによるものである。
  したがって、無償による被災資産の修繕、人的役務の提供を受ける場合も同様に取り扱われることになる。

(5)災害見舞金等が交際費等以外の損金として取り扱われる趣旨

  前述のとおり、従前の取引関係の維持・回復を目的として、取引先の復旧過程で支出した
災害見舞金等は、慰安・贈答のために要する費用というよりは、むしろ取引先の救済を通じて
自らが蒙むる損失を回避するための費用であるとみるこたができることによるものである。
  したがって、支出する災害見舞金等の多寡は問わないこととされているが、法人はこのような
災害見舞金等を支出するに当たっては、その取引先の被災の程度、取引先との取引の状況等を考慮する
と思われるので、自ずからそれなりに相応な金額になるものと考えられる。

(6)災害見舞金の支出と領収書等の有無について

  法人が災害見舞金を支出した場合に、取引先から領収書の発行を求め難い事情にある場合もあると
考えられるが、このような場合には、領収書の保存がなければ直ちに使途不明金等として取り扱われる
というのでなく、その法人の帳簿書類に支出先の所在地、名称、支出年月日を記録している場合
には、これが認められることとなる。

(7)取引先の役員や使用人等の個人に対して支出する災害見舞金

  法人が、得意先等の取引先である事業関係者の慶弔、禍福に際し一般的に支出する費用は、
税法で規定する慰安、贈答その他これらに類する行為のために要する費用に該当することから、
従来から交際費等として取り扱われている。
  このため、取引先の役員や使用人等の個人に対して支出する災害見舞金は、個人事業主に対する
ものを除き、取引先の救済を通じてその法人の事業上の損失を回避するというよりは、いわゆる
付き合い等としての性質を有するものであることから、このような支出は交際費等に該当することとなる。


自社製品等を被災者に提供した場合

  法人が行う被災者に対する自社製品等の提供は、災害という緊急性に鑑みて拠出が行われるものであり、
また、人道的見地や社会的要請に基づき行われる場合が多いものと考えられる。
  このような場合の物資等の提供は、国や地方公共団体が行う被災者に対する物資等の供給と同様な
側面を有しているものとみることもでき、また、一方では、その経済的効果からいえば、
広告宣伝費に準ずる側面を有しているとみることもできる。
  したがって、特定のごく限られた者のみに対する贈答(利益供与)を目的としたものは除き、
その提供先が不特定又は多数の被災者である救援物資等の提供は、
寄附金や交際費等に該当しないことは明白である。


協同組合等が組合員等に支出する災害見舞金

  例えば、農業協同組合や中小企業等協同組合など法人税法別表第三に掲げる協同組合等の組合員である
農家や中小企業者は、一般的にいって一般消費者に該当せず、したがって、協同組合等からみれば、
組合員は購買又は販売などを行う得意先である事業者(生産者)という関係になる。
  しかしながら、農業協同組合等は、もともと共同事業体としての性格を持ち、組合員の福利厚生は一般に
その本来の目的事業である。
したがって、その福祉厚生のための災害見舞金等を交際費等とするのは、はなはな実情に即さない処理になる。
  そこで、協同組合等が福利厚生事業の一環として一定の基準に従って組合員その他の構成員に対して
災害見舞金等を支出した場合には、その費用は交際費等に該当しないものとして取り扱うことになる。
  なお、災害見舞金は例示であるから、組合員等に福利厚生事業の一環として一定の基準に基づいて行うもの
であれば、慶弔、禍福のすべての支出金については交際費等とされない。


災害の場合の取引先に対する売掛債権の免除等

  売掛金等の債権を免除した場合に、その免除をしたことに合理的な理由がなければ、免除した金額に相当する
金額は原則として寄附金あるいは交際費として取り扱うこととなる。
  しかしながら、納品した商品等が被災した、あるいは取引先が被災したといった事情がある場合に、
その取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間内において、復旧支援を目的として
売掛金等の債権を免除するときは、取引条件の修正等といったその実質に着目して、その費用を寄附金や
交際費以外の費用として処理することになる。
  また、既に契約で定められているリース料、貸付利息、割賦代金等で災害発生後に授受するものや災害発生後
に新たに行う取引につき従前の取引条件を変更するものについても同様に取り扱うこととされている。
  なお、「得意先等の取引先」には、得意先、仕入先、下請工場、特約店、代理店等のほか、
商社等を通じた取引であっても自ら価格交渉等を行っている場合の商品納入先など、実質的な取引関係に
あると認められる者が含まれる。
したがって、何らかの取引関係があれば親子会社間における売掛債権の全部又は一部の免除であっても、
その被災した法人が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間内において復旧支援を目的として
行われるものであれば、寄附金や交際費に該当しないことになる。
  また、業界団体のほか融資を受けている銀行等も、ここにいう取引先に含まれる。



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